『万引きストーカー』
 物心ついた時から20年近く万引き癖のある亜希。今日も本屋で『模倣犯』を万引きしていたら、それを植田に見られてしまう。警察に突き出されるのかと思いきや、植田はお台場に亜希を誘い、一日中、観覧車に乗ったり、寿司を食ったりしてデートらしきことを強要する。だからといって、なにがあるわけでもないのが、怖い。

 ストーカー物って、それだけでもう物語になるんですよ。恐いもの見たさ。きゃーって感じ。ストーカーって、描いていい範囲内のキチガイなんです。なじみやすいキチガイ、ね、これ的確な表現でしょ。だってそうなんだもの。しかも、ストーカーは根拠がなくていい。なぜそういうことをするのかというと、それはストーカーだから。キチガイをキチガイだからというのと、連続殺人犯を連続殺人犯だから、と言ってしまうのと同じなんです。たいてい、そうやってカテゴライズして、名前をつけたら、それで納得してしまうものなんです。ストーカーを出した時、ストーカーがストーカーするのは仕方ないとして(おいおい)、ストーカーされる方にも非があればいいのかなと。でも、ストーカーがその非を攻め続けるとなると、それはストーカーでしかないから、ありきたりの話になるんです。だから、そうでなく、その非をまったく利用しない。というバランスで作ってみた作品です。このストーカー役をやった植田君は自分で作・演出をするようになって、ちょっと『メトロ』から遠ざかっておりますが、ストーカーが実は・・という話も用意されています。

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